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人工心肺装置

人工心肺装置の概要

人工心肺装置は弁膜症、大血管疾患、先天性心疾患、虚血性心疾患などの開心術中における心臓、肺の代用とするために開発されました。人工心肺装置の開発は最初、心臓に血液を流し込む臓器灌流(ぞうきかんりゅう)が目的とされ、送血用となる人工心臓ポンプの開発のみが行われていました。しかし、送り込まれる血液は動脈血であることが知られるようになり、血液を酸素化する動脈血化装置との組み合わせが考えられるようになります。しかし、それを実現させるためには装置の効率化、血液破壊など多くの課題がありました。

人工心肺装置の開発に大きな影響を与えたのは米国の外科医John Heysham Gibbonの存在です。Gibbonは早くから肺塞栓症などの手術において血液の動脈血化を行う心肺補助法を唱えましたが、周囲の協力は得られず、やむなく夫人の協力を得て研究に取り組みました。1935年に猫を使っての実験で4時間の体外循環に成功、1953年にはIBMとの共同開発による人工心肺装置で心房中隔欠損の根治手術に成功しました。また、体外循環療法発達の要因の一つに血液凝固を抑える抗凝固剤ヘパリンの存在があります。ヘパリンは1910年代に発見されましたが、実用化されるまでには20年もの月日がかかりました。

こうした背景により米国ではMayo- Gibbonスクリーン型人工肺、Dewall-Lillehei気泡型人工肺、Key-Cross円板型人工肺など次々と開発されました。その後は人工肺が中空糸型膜型人工肺、人工心臓ポンプはメタルフィンガー式心臓ポンプからローラー型心臓ポンプが主力となっています。